【完】せんぱい、いただきます。

「あの、先輩、これ。おめでとうございます。」




食事が落ち着いてから、私は先輩に小さな紙袋を渡した。


「これ、今、開けていいの?」


私はコクッとうなずいた。


白い紙袋の中には、シンプルな小さな白い小箱。


赤い細いリボンが掛けられている。


そのリボンをほどいて、箱を開けた。





「こういうシンプルなデザイン、好きなんだよね」





ほっと息が漏れる。



よかった。





「スーツ着てくればよかった。


実紅ちゃんありがとう。大事に使う。」





先輩はまだ、私が贈ったネクタイピンを見つめている。




「気に入っていただけてよかったです。」




「ネクタイピンって、ネクタイに刺すタイプとかよりも、俺はクリップタイプのが好きなんだよね。


話したこと、なかったよね?」




シルバーのクリップタイプのネクタイピン。

長方形で、右端に小さくクロスのデザイン。


私が一目ぼれしたデザインだった。

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