【完】せんぱい、いただきます。
夏の少し湿気を含んだ空気がまとわりつく。
生ぬるい風が吹く。
遠くで花火の音が聞こえる。
そして、体の中では、
私の何かが暴れてドキドキしている。
う、うるさい。
ラストスパートなのか、
最後に連続で大きな花火が打ち上がった。
隣では、真剣な顔で携帯のカメラを
構える先輩。
キレイな切れ長の二重。
スっと整った鼻筋。
血色のいい薄い唇。
それらが、花火の光に合わせて
艶やかにうつる。
ふっと、先輩は無言で背を向けて、
部屋の方へ歩きだした。
え、ちょっと・・・。
私も慌てて背中を追う。
「花火、綺麗だった。」
ボソっと先輩が呟く。
何か、言わなきゃ、と思う。
「一緒に見れて良かった。」
・・・え。
その一言が聞こえて、
私の心臓は跳ね上がる。
私は下を向いた。
もう、なんて言っていいかわかんない。
「私もです」
とか、言ったらいいの?