【完】せんぱい、いただきます。

「あのさ。ちょっと」




教室を出ると、

聞き覚えのある声で呼び止められた。




同じグループの彼―誰だっけーに

呼び止められた。




私が立ち止まると、

4つ折りにされた白いルーズリーフの

切れ端を渡された。




「これ。」






私は反射的に受け取る。



「じゃ」と短く言い、

手を挙げ彼は私に背を向けて歩きだした。






彼が階段に向かい、

その背中が見えなくなってから、

私は受け取った紙切れを開いた。




そこには、男子っていう感じの

少し形の崩れた、色の薄いアルファベットと

数字が並んでいた。







そして一番最後に一樹さんの名前が書かれていた。






「何、これ。」









だれもいない廊下で、私は呟いた。



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