【完】せんぱい、いただきます。

先輩はそう言って、自販機で

冷たい紅茶を買ってきてくれた。




「とりあえず、これ飲んで」




「でも」



遠慮して抵抗する私に、

先輩は紅茶のキャップをあけて渡した。



それでも私は抵抗するから



「先輩命令」





なんて言ってくる。



私は、一口、紅茶を口に含む。




冷たくて、涙で流した水分を

吸収しているって感じる気がした。





「あのさ、俺、彼女、

ほんとにいないから。」






先輩はきまずそうにそう言った。




「あとさ、さっきの人は同じゼミの人。

なんか、ワインもらったらしいけど、

飲まないからって持ってきてくれたの」





先輩はそこまで言うと、

私の手から紅茶のペットボトルを取り、

自分の口に含んだ。






ちょっと、先輩。それ間接キス・・・。







私は何も言えずに、先輩の喉元を見ていた。




動く喉仏に、

「ああ、男の人だな」なんて思ってみる。



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