【完】せんぱい、いただきます。
私と先輩にはいくつか約束事がある。
その一つが、夜は一人で出歩かないこと。
だから先輩の家でごはんを食べるときは、
先輩がいつも迎えに来てくれる。
私と先輩は一人暮らしで、
家は歩いて15分くらいの距離にある。
住んでいる場所は住宅街で、
街灯がないわけでもなく、
人通りが少ないわけでもない。
それでも不審者はいるようで、
入学して間もない私も、
変な人に声をかけられた人がいる話はたまに耳にする。
たった15分なのだから一人で行けるのに、
自転車も原付も、もちろん車も
持っていない先輩は必ず歩いて迎えに来てくれる。
そして、歩いて先輩の家に二人で向かう。
先輩が来るのなら、
私の家で料理をしてもらって
私としては構わないのだけれど、
「実紅ちゃんは女の子なんだから、簡単に男を部屋に上げたらダメでしょ。」
と先輩の紳士力みたいなものが発動する。
そして
「先輩は男なのに、私という女の子は部屋に入れていいんだー。」と思ってしまう。