【完】せんぱい、いただきます。


水の流れる音がして、

すぐに冷凍庫を開ける音がする。



そして、キッチンとこの部屋をつなぐドアが開いた。



「実紅ちゃん、ありがとう」




先輩の手には、私が選んだ濃い青のグラスに

氷が3つ入っていた。




自分の座椅子に座り、ウイスキーを注ぐ。




そして、カラン、コロン、と

氷が音を立てるように揺する。





「この音、好き。」






自分の耳元でグラスを揺すってから、


私の耳元にグラスをもう一度揺する。





夏に聞いたグラスと氷がぶつかる音とはまた少し違う、

透き通った音がする。



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