溺甘副社長にひとり占めされてます。

自信を持って私に宣言する彼女の瞳はキラキラと輝いていた。


+ + +


同じ靴を履いているというのに、さっきよりも自分の視線が高くなっているような、そんな気がした。

村野さんと並んでエレベーターを降り、そして会場の入口手前で足を止める。


「ありがとう、村野さん」

「さっきより数倍綺麗ですよ。AquaNextと私の腕が良いからですね」


得意げな彼女に、つい笑ってしまう。彼女も肩を揺らしている。

そして、にこやかな表情のまま、私たちは再び歩きだした。

戸口近くにいるスタッフが、私を見て驚いた顔をしたのち、慌てて会釈をしてくる。

会場内に入れば、こちらを見た来客たちが動きを止め、息を飲んだのが伝わってくる。

男性の視線に気恥ずかしさを覚えながらも、女性たちの囁き声を気にしないように努めた。


ついさっき鏡を見て、私自身も驚いたのだ。

鏡に映る自分は先ほどよりも自分らしく思えるのに、凛とした輝きに包み込まれているように見えた。

きっと村野さんの言う通りなのだと思う。

自分自身だけの力ではない。

大好きなAquaNextのドレスを着ているという充実感や、私のために一生懸命になってくれていた村野さんへの感謝の気持ち。


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