溺甘副社長にひとり占めされてます。
「なっ……いえ……ほんとに……あの……私……っ」
微笑みを浮かべている。それなのに、瞳と声音はほんの少しの冷淡さを帯びていた。
真っ直ぐに見つめてくる瞳と、静かな迫力を纏った声に耐えられなくなってしまい、気が付けば、私は立ちあがっていた。
けれど、逃げだすことはできなかった。すばやく、白濱副社長に手を掴まれてしまったからだ。小さく悲鳴をあげてしまった。
「どこに行くつもりかな? まだ話は終わってないよ」
「いえ、そんな。とんでもないです! 副社長に私ごときの悩みを聞いてもらうなんて、とんでもないって言うか。そんなのおこがましいと言いますか。大丈夫です。お手を煩わせるようなことは、ほんとに、大丈夫ですから!」
「えー。美麗ちゃん、そんなこと言うの? 俺と君の仲じゃん。寂しいなぁ」
誤解を招くような発言に、私は頬を引きつらせた。私たち、そんな仲じゃありません!と心の中で強く否定する。
「良いから、座って」
言いながら、手を引っ張られた。私は崩れ落ちるようにその場に腰をおろす。
「それで……」
白濱副社長が再び口を開くと同時に、携帯の着信音が控えめになった。