溺甘副社長にひとり占めされてます。
にこやかに電話を切った白濱副社長へと私は身体を向けた。
「すみません。ハッキリ言わせてもらいます! 遥子さんを待たせてまでするほどの話、私にはありませんから!」
「でもさ。このまま別れたら、美麗ちゃんのことが気になっちゃって仕事が手につかなくなっちゃう」
「いえ。白濱副社長の貴重な時間は、私にではなく遥子さんにこそ使うべきです」
きっぱりと跳ねのければ、白濱副社長がふっと笑みを浮かべた。
「遥子ちゃんって、俺の秘書だからね。だから俺が来なければ来ないで、別な仕事にとりかかっていると思うし」
私も心を強く持ち、大きく首を横に振る。
「いいえ、だめです。時は金なりですよ」
「確かにそうだけど、こうやって社員の悩みを…」
「副社長!」
「じゃあ、俺も今から昼休みってことで……」
「副社長っ!」
「だからさ、俺はね。美麗ちゃんと……」
「白濱副社長っ!!」
大きな声で遮った。途端、白濱副社長は驚いた顔し、開いていた唇をぱたりと閉じた。
「行ってください。秘書はお腹を空かせて、あなたの帰りを待ってるかもしれませんよ」
身ぶり手ぶりを交えながら、少し大げさに訴えかけると、すっと、彼の表情が消えた。
私はギクリとし、身を強張らせる。