溺甘副社長にひとり占めされてます。
追求され、私がさっきまでの出来事を口走る前に、白濱副社長には上階へ、私が気軽に話などできない場所へと行って欲しかった。
そんな思いでつい強気に出てしまったけれど、もう少し言葉を選んで発言すれば良かったかもと後悔する。
本社からどこかに飛ばされるかもしれない。
ふっとそんな考えが頭をよぎったけれど、白濱副社長の能面のような顔を見て、自分の考えは甘いと思い直した。
異動なら、まだ良いほう。最悪、クビを宣告されるかもしれない。
失敗したと右手で目を抑えると、ふふっと、笑った声が聞こえてきた。
見れば、白濱副社長が口元に笑みを浮かべていた。瞳に挑戦的な光を湛えている。
「俺に喋らせないなんて、やるね! 分かった。ひとまず、君の言う通りにするよ」
そして、私に向かって手を差し出してきた。
「でもその前にさ、お願いがあるんだけど……コーヒー、とっても良い匂いだなぁ。一口もらえる?」
彼が無邪気に笑いながら要求してきたマイボトルを、無意識に手に取ってしまった。しかし、渡すのは躊躇われる。
これは直接ボトルに口をつけて飲むタイプのものだ。
もちろん既に、私はこれを飲んでいる。