溺甘副社長にひとり占めされてます。
ボトルを傾ける気配を感じ、私は彼を盗み見る。
美味しそうにコーヒーを飲んでいる。喉仏が上下するのを見てしまえば、性別の違いを嫌でも意識してしまう。
私は白濱副社長のことを素敵だと、パーフェクトな人だとも思っている。
けれどそれよりも、気さく過ぎて女性関係が派手そうな感じが苦手である。
……苦手なはずなのに、彼とふたりっきりで並んで座っていることが、たまらなく恥ずかしい。
心が落ち着かない。頬が不自然なほど熱くなっていく。
「あと一口!」
「全部あげます!」
隣に置いておいたお弁当箱を慌てて掴み取り、私は勢いよく立ち上がった。
「……み、美麗ちゃん?」
「失礼しますっ!」
ポカンとしている白濱副社長にぎこちなく頭を下げてから、私は階段を駆け下りていく。
私、なんで逃げてるんだろう。
なんで、こんなにドキドキしてるんだろう。
半分パニックになっている自分にそんな疑問を覚えながら、私は力いっぱい14階の扉を押し開けた。
+ + +
パソコンのキーボードを叩く手を止め、横に置かれているマイボトルを見れば、自然とため息が口をついて出た。