溺甘副社長にひとり占めされてます。
視線を彷徨わせたのち、私は机上に置かれたタンブラーをじっと見つめる。
「あの……白濱副社長。これは……」
「コーヒーだよ。昼間、美麗ちゃんのぶんまで飲んじゃったからね。お返し」
彼は言いながら、自身でも持っていたらしいタンブラーを、ほんの少し持ち上げて見せた。
彼のものはネイビーに白の水玉だ。
「でっ、でもあれは、私の飲みかけでしたし」
「いいのいいの。俺からのプレゼントだから、タンブラーごと受け取って」
白濱副社長は机上に置いたばかりのタンブラーを、私の手に押し付けてきた。
無下につき返すことも悪くてそれを受け取ると、白濱副社長が嬉しそうに笑った。
「色違いで、お揃いだよ」
「えっ!?」
確かに、色は違うけど形状は一緒だ。何度見ても同じだ。
お揃いという彼の声が、頭の中でリピートする。
無意識のうちに、私は眉間にしわを寄せていた。
「いくら俺でもさ。美麗ちゃんにそんな嫌そうな顔されたら、傷つくよ」
「いっ、いえ。嫌とか、そういうわけでは。とっても可愛いですし……」
「それならよかった! たまにはそれも使ってね!」
「……は、はぁ。ありがとうございます……あっ!」
タンブラーに書かれていたアパレルのブランド名に、私は小さく声を上げる。