溺甘副社長にひとり占めされてます。
「AquaNextのですか!?」
大好きなブランドのものだと知ると、一気にテンションが上がってしまう。
「AquaNext、好きなの?」
「はい! 大好きです! 値段も高いし、あまり多くは持っていませんけど、自分にご褒美って思う時に買うのは、ここです。すごく好きです」
ちょっぴり声を大にして思いを打ち明けると、白濱副社長が持っていた自分のタンブラーを私のデスクに置いた。なぜか顔をしかめている。
「喜んでもらいたくて選んだものだから、そう言ってもらえれば大成功で、俺も嬉しくなっていいはずなんだけど……大好きって言われると、複雑な気分になるなぁ。なんでかなぁ。AquaNextの副社長の顔がちらつくからかな」
言いながら、ちらついている誰かの顔を追い払うかのように、白濱副社長が眼前で払う様な仕草をした。
ホテルのブライダル施設ではAquaNextのウエディングドレスを取り扱っていたり、AquaNextも何かのイベントを催すときに、我がロイヤルムーンホテル内の会場を使用してくれたりする。
白濱副社長はちょっぴりふて腐れ顔になっているけれど、声を聞く限りでは、それほど不快さを感じていないように思えた。
その副社長とは仕事で何度も顔を合わせているだろうし、気心が知れているのかもしれない。