溺甘副社長にひとり占めされてます。
「あったよ。嬉しかった気持ちが一瞬で砕け散った。今日一日、元気に仕事をこなせないかもしれない」
「……大丈夫ですか?」
朝から彼に何があったのか。
そこまで踏み込んで聞いて良いのかわからず、「大丈夫ですか?」と尋ねる程度にとどめておいたのだけれど、何か彼の気に障ってしまったらしい。じろりと見られてしまった。
その態度に疑問を覚えながらも、白濱副社長のふて腐れ顔が段々と悲しげに変化していることに気づいてしまえば、妙に焦ってしまう。
私は頭をフル回転し、話題を探す。
「あの……昨日は、間違ってるかなと思って言い出せなかったのですが、私にくださったコーヒー、ここのですよね?」
問いかけながらも、きっとそうに違いないと、自分の中で思いは確信へと変わっていく。
彼が私にくれたコーヒーは、いつもの飲みなれている感じに、すごく近かったのだ。
そうは思えど、昨日は勘違いかもしれないという思いを追い払うことも出来なかった。
しかし、彼は今ここにいる。それが何よりの答えのような気がしてならない。
「そうだよ。俺もね、枝海(えだみ)マスターの淹れるコーヒーが好きだから、実は、けっこうな頻度で店に来てるんだ……だから、美麗ちゃんと好みが一緒なんだって知ってすごく嬉しかったのに」