溺甘副社長にひとり占めされてます。
ここのオーナーは枝見という人なのかと、自分の知らなかった情報に、うんうんと頷いていたけれど、話の矛先が自分に向けられたことに気が付き、私は少しだけ体を強張らせた。
「お目当ては、コーヒーだけじゃなかったみたいだね」
「え?」
コーヒーですけど?
タンブラーを手に、列に並んでいるというのに、白濱副社長の目に私はどんな風に映っているのか、不思議になってくる。
首を傾げてみていると、白濱副社長が顔をしかめながら、どこかを指さした。
「美麗ちゃんはああいうのがタイプだったんだ」
「……えっ!?」
彼の顔と彼が指差した方。交互に何回も見たあと、やっと彼の言わんとしていることが理解出来た。
指をさした方向には、さっきまで私が見ていた男性がいる。
白濱副社長は私がこの店に、コーヒーとあの男性目的で来ているとでも言いたいのだろう。
「ち、違いますよ!」
「違わないよ。さっき、彼を見ながらニヤニヤしてたの、俺ちゃんと見てるからね。始めて見たなぁ。美麗ちゃんのあんな嬉しそうな顔。おかしいな。どうして俺の前では見せてくれないのかな」
「待ってください。言うほど私、笑ってなかったですよね?」
「いいや。笑ってたよ……」