溺甘副社長にひとり占めされてます。
話題がパーティーに来ていた人たちのことに変わり、「そう言えば」と武田さんの口からAquaNextの社長だという男性の名前が出てきた。
「おふたりはとても仲が良さそうに見えましたが……」
「えぇ。彼とは古くからの友人ですから」
聞いた事実に、私は白濱副社長を二度見してしまう。
彼の友人には他にもすごい人物がいるかもしれない。そうと考えると、なんだかすごく羨ましい。
武田さんがAquaNextの話を続けようとした瞬間、前触れもなく、白濱副社長が口元に薄く笑みを浮かべた。
「武田さん。AquaNextと仕事がしたいなら、下手な小細工はしない方が身のためだよ。あそこの兄弟、切れ者だから」
何か心当たりでもあるのだろうか。武田さんは少しだけ顔色を悪くし、動揺したかのように視線をそらした。
「小細工なんて、そんなこと……あぁ、えっと……白濱さん。こちらの女性は……」
完全に話を変えることにしたらしい。武田さんが私を見おろしたまま、難しそうな顔をした。
「彼女? うちの社員です」
「あぁ。そうですか……そうですよね。ただの社員ですよね」
白濱副社長の返答に、武田さんは納得したというような笑みを浮かべ……そして最後に、ぽそりと小さくそう呟いた。