溺甘副社長にひとり占めされてます。

手の平から伝わってきた胸板の逞しさに、うろたえると同時に、変に意識してしまう。

白濱副社長に抱き寄せられた状態のまま、身動きすら取れずにいると、白濱副社長がふふっと笑った。


「彼女、かわいいよね？」


そして武田さんに向かってそんなことを聞く。

案の定、武田さんは微妙な笑みを浮かべてしまった。

あからさまではないけれど、表情から答えづらいのだろうなということがわかる。


「変な質問しないでください！　困ってますから」


小声で文句を言うと、白濱副社長がちらりと私を見おろしてきた。

どことなく冷たい瞳に、ドキリとする。

怒りたいのはこっちなのに、なぜか、彼がムッとしている。


「変な質問？　俺、変なことなんて何一つ言ってないよ？」


彼が私に囁きかけてきた。

彼もまた小声だと言うのに、その言葉が私の中で力強く響いた。

白濱副社長の視線が自分に戻ってきたことに気づいたらしく、武田さんがハッとする。

すぐさま表情を戻し、口を開いた。


「そうですね。とても可愛らしい……」


しかし、白濱副社長は手の平を向け、それ以上聞きたくないかのように、武田さんの言葉を遮った。