溺甘副社長にひとり占めされてます。
「うん、分かった。もういいよ。君には見る目が無いってことが、よーく分かったから」
武田さんは面食らった顔で、白濱副社長と私を交互に見ている。
「仕事の話なら、また今度にでも。もうすぐ俺たちの順番なので、失礼します。さ、美麗ちゃん」
白濱副社長は何事もなかったかのようにいつもと同じ笑みを浮かべ、そして、私の腰に触れている手に軽く力を込めた。
「は、はい……」
私はそれに従うことしかできず、武田さんへとぎこちなく頭を下げてから、彼に背を向け、列を詰めた。
近くの席に座っていた女性たちの潜め声を耳にし、私は恐る恐る周りを見回す。
周囲の女性たちが白濱副社長に注目していることに気づいた途端、居心地が悪くなってくる。
武田さんも素敵だけれど、それ以上に、白濱副社長の容姿は目を惹く。彼はやっぱり素敵だ。
「美麗ちゃん。ありがとう」
そわそわしながら、白濱副社長を見上げると、彼の目線が私の手元に下がっていく。
「俺がプレゼントしたものを使ってくれて、すごく嬉しい」
「いえ。そういうことなら、ありがとうは私の方です」
昨日、ずっと考えていた。
もしかしたらこのタンブラーは、私が落ち込んでいたから、白濱副社長がわざわざお店まで足を運んで、選んでくれたものかもしれないと。