溺甘副社長にひとり占めされてます。
私の傍にいたいと言ってくれた。
君を守るよとも言ってくれた。
あれは本気の言葉なのだろうか。
それとも、村野さんにも言っている言葉なのだろうか。
白濱副社長。私は、本当のあなたが知りたい。
出勤してきた同僚ふたりに「おはよう」と声をかけられ、私は俯けていた顔を勢いよくあげる。
私も「おはよう」と挨拶を返すと、続けて同僚が朝の出来事を話し出した。
その瞬間、突然辺りが賑やかになった。
甘えたような声を響かせて、宍戸さんが課長と共に室内に入ってきたのだ。
そしてその後ろには村野さんの姿もある。
さっきのことを思い出し、私は早々に彼女から視線をそらした。
バッグから白濱副社長にもらったタンブラーを取り出した時、課長が私を呼んだ。
「館下君! 早速だが、いくつか午前中にあげて欲しい仕事が……」
「あっ。それ!」
課長からの午前中という要求につい眉根を寄せた時、自分のデスクにバッグを置いた宍戸さんが私を指差して大きな声を上げた。
「AquaNextのでしょ!」
すぐに私は、彼女のいるところでタンブラーを取り出すべきではなかったと後悔した。