溺甘副社長にひとり占めされてます。


「すごく可愛いけど……館下さんには似合わない」


宍戸さんは小声でそんなことを言い、馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

彼女は実は、私がAquaNextを好きだと言うことを知っている。

以前、お気に入りのバッグを会社に持ってきたことがあったのだけれど……その時も、今のような言葉を言われたのだ。

とてもショックだった。

だからそれ以来、会社にAquaNextのものを持ってきたことはない。

宍戸さんの言葉に呼応するように、課長もがははと下品に笑い出す。

自分だけならまだしも、選んでくれた彼の心遣いまで馬鹿にされているような気持ちになれば、徐々に苛立ちが募っていく。


「……これ」


すっと横から伸びてきた手が、私のタンブラーを掴み取った。

慌てて顔を向ければ、村野さんがいた。タンブラーをまじまじと見つめている。


「やっぱり」


そう言って、彼女は可愛らしく笑った。


「このタンブラー、限定品ですよね。数量が少なくて、入手するのすっごく難しかったってきいてますけど」

「え?」


私はそんなこと聞いていない。

思わず目を大きくすれば、顔をあげた村野さんが、私を見つめて薄く微笑んだ。


「まぁでも。館下さんが、今朝一緒に出社した人からもらったって言うなら、納得ですけど」



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