溺甘副社長にひとり占めされてます。
彼女の笑みが怪しく輝いている。これ以上、彼女を喋らせたらだめだ。直感でそう感じた。
「えっ!? 館下さん、彼氏できたの!?」
「いつの間に!? 教えてくれればよかったのに。水臭いなぁ」
早速、同僚二人が食いついてきた。
「そんな入手困難なものをプレゼントしてくれるっていうなら……もしかしてAquaNextの社員?」
「ありえる! それなりの役職に就いてたら、限定品とかも簡単に手に入れられるかもだし。AquaNextってお洒落でかっこいい男性社員多いって話なのに、すごい羨ましい!」
「彼氏の同僚、紹介してよ!」
「それいい!」
きゃーっと言いながら盛り上がる同僚二人を、課長と宍戸さんがそんな馬鹿なといった顔で見ている。
もうこの話は終わりにしたいのに、何か違う話題をと思うのに……焦りで何も浮かんでこない。
私が何も言わないため、同僚二人の期待に満ちた目線は村野さんへと向けられる。
それを受け、村野さんはしれっとした顔で話を続けた。
「残念ですけど違いますよ。うちの副社長、怖いもの知らずで、あのAquaNextにもわがまま言える人だから、無茶言って手に入れたんでしょうね」
一瞬で、その場の空気が凍りつき、私は両手で顔を覆う。