溺甘副社長にひとり占めされてます。
しかし、課長はそれを聞き流した。私をちらちら見たあと、震える手で口元をおさえながら、ごほんと咳払いをする。
「決算書の方を館下君に。急ぎじゃないから、ゆっくりやってくれ」
「……はい?」
「やだな、館下君。それならそうと、もっと早く言ってくれよ。はははは」
変な汗をかきながら、課長が乾ききった笑い声を発している。
手の平を返してきた課長。
それを呆れ顔で見ている村野さん。
興味津々に瞳を輝かせている同僚二人。
そして今にでも怒りが爆発しそうな宍戸さん。
私はどうしたら良いのか分からなくて、自分の椅子へと力なく崩れ落ちた。