溺甘副社長にひとり占めされてます。
3章、彼を知れば知るほどに、
課長の態度はすぐ元通りになるだろうと思っていたけれど、週が明け、月曜日になっても変わらない。
いまだ、私への接し方を決めかねているようだった。
「正直に教えてくれ。君と白濱副社長との関係を」
私は足を止め、しつこく追いかけてくる課長へと振り返った。
「ですから。課長が考えているような特別な関係ではありません」
大きな声で言いたいけれど、ここは歩道。周りの目があって恥ずかしいから、声も小さくなってしまう。私の隣にいる同僚もずっと苦笑いを浮かべている。
駅の構内で同僚と会い、一緒に会社へと向かって歩いていると、駅から出たところで、課長にばったり会ってしまった。そこからずっと、この調子なのである。
「それは本当なのか? 確かに、君みたいな地味な……いや。何でもない」
課長が小刻みに首を振っている。白濱副社長と私の関係がはっきりしない限り、嫌味は言わないことにしたらしい。
同僚が小悪魔的な笑みを浮かべて、口を挟んできた。
「課長。館下さんをよく見てください。本当に地味ですか? 宍戸さんや村野さんみたいにしっかり化粧したら、絶対同じこと言えませんよ。彼女、スタイルいいし、派手な服だって似合うと思います。さすが白濱副社長、しっかり見抜いてます」
同僚の一言で、課長が私をジロリと見た。
つま先から頭の天辺へと課長の視線が上がってきて、ぞくりと寒気が走る。
納得し辛いらしくうめき声を上げた課長へと、同僚がため息をついた。