溺甘副社長にひとり占めされてます。
「それに副社長からプレゼントももらってるんですから。ね?」
同意を求めてきた同僚に苦笑いを返し、私は歩き出した。
「それだって、本当のことなのか?」
課長をその場に置き去りにしたかったけれど、無理だった。すぐ後ろから苦悩じみた声が聞こえてくる。
社のビルの前に到着すれば、ちょうど向こう側から歩いてきていた宍戸さんと鉢合せし、自然と互いの足が止まった。
彼女も変わらない。今日も朝から敵意むき出しの眼差しを向けてくる。
そしてあろうことか、ビルから男性社員ふたりと、秘書の遥子さんを引きつれて、白濱副社長が出てきた。
すぐさま宍戸さんが嬉しそうに彼へと走り寄っていく。
「白濱副社長! おはようございます!」
「うん。おはよう」
白濱副社長は何かの冊子を片手に役員の男性たちと話をしていたけれど、彼は微笑んだ顔を宍戸さんに向け、明るく挨拶を返した。
そして、嬉しそうに頬を染めた宍戸さんに背を向け、私たちの立っている方へとやってくる。
すぐに白濱副社長と目が合い、私はうろたえてしまう。彼と会うのは、キスされそうになったあの朝以来なのだ。
彼の向かってくるスピードは弱まらない。
そのまま私たちの横を通りすぎていくだろう。
そう思ったのに……、