溺甘副社長にひとり占めされてます。
「お願いできますか?」
まっすぐに見つめられ、私は大きく頷いた。
「もちろんです」
ロイヤルムーンホテルと明記された真っ白で厚みのある封筒を受け取ってから、私は遥子さんに笑いかけた。
「少し休んでいてください。副社長にしっかり伝えておきますから」
「ありがとう」
遥子さんから封筒へ、そして封筒から同僚へと視線を移動させる。
目と目が合えば、同僚はすぐに私の考えを察してくれたようだ。
「こっちは任せて」と呟いたあと、「ここでは何なので、秘書室に行きましょうか?」と遥子さんを支えて歩き出した。
「なんで、私じゃダメなのよ」という宍戸さんのぼやきが聞こえ、思わず封筒を持つ手に力を込める。
モヤモヤとした気持ちを振り切るように、私はその場から走り出たのだった。
宿泊客などで賑わっている一階ロビーを小走りで通り抜け、エレベーターで三階へとあがる。
三階には宴会、会議、控室など、さまざまな用途に使用できる部屋がいくつか並んでいる。
白濱副社長がいるとすれば、きっとそこだろう。
すぐに彼を見つけることができればいいのだけれどと、少しだけ不安になりながらエレベーターを降りた。