溺甘副社長にひとり占めされてます。
辺りに視線を走らせすぐに、奥へと長く伸びている廊下の中ほどにすらりとした立ち姿を見つけ、ホッとする。
自然と足は白濱副社長へと向かって進み出す。
「……そんなこと言わず、うちの娘はどうかね!」
彼と立ち話をしている50代半ばくらいの男性が、にやにやと笑いながら白濱副社長の腕をポンポンと叩いている。
「君と並んで歩けば、美男美女だと話題をさらうのは確実だな」
「とんでもない。私では、娘さんの足を引っ張りかねません」
「ご謙遜を! 最近もまたメディアでイケメン副社長と取り上げられているようですな。うちの娘も、あなたのインタビューを夢中になって見ておったぞ」
彼は完璧な微笑みを浮かべたまま、なおも腕を叩こうとする男性から、さらりと身を引いた。
ずんずんと近づいていけば、白濱副社長が私に気付いて、目を大きくさせた。
「失礼します」
そして男性へと一言断りを入れてから、一気に私へと歩み寄ってきた。
「美麗ちゃん、どうしたの?」
「遥子さんの具合が悪くなってしまって、私が代わりにこれを」
「本当!?」
私は預かった封筒を白濱副社長へと差し出した。彼もすぐにそれを受け取り、中身を確認するように封筒の中を見た。