溺甘副社長にひとり占めされてます。
「美麗ちゃんありがとう。助かったよ」
そして最後に、私に向かってにっこりと笑った。
その笑みがとても優しくて、私は急に恥ずかしくなってしまう。
単に感謝されただけ。彼ならみんなにありがとうと笑みを向けるはず。
平常心にならねばと自分自身にそう言い聞かせながら、私は首を横に振った。
「いえ。そんな……あの、それから。総務課の同僚が、遥子さんを秘書室に連れて行くと言っていました」
「わかった。すぐにこちらからも休んでてって連絡入れるよ」
「お願いします……それでは。私、戻ります」
白濱副社長に向かって深く頭を下げ、回れ右をし、その場から立ち去ろうとしたけれど、「ちょっと待って」と腕を掴まれてしまった。
「今日一日、遥子ちゃんの代わり、頼める?」
「えっ。代わりなんて、私ではとてもそんな」
「大丈夫大丈夫。他の秘書の皆さんの手伝いをしてくれるだけで。あと、俺の隣でニコニコしたり、時々、副社長お時間がって俺に話しかけてくれるだけで良いから」
「お手伝いくらいならできますけど、あとの二つは……」
指示してもらえば、手伝いはできると思う。しかし、白濱副社長の横に秘書のような顔をして立つことは、私には荷が重い。