溺甘副社長にひとり占めされてます。
「はい、決まり。美麗ちゃん総務課だったよね」
「ちょっと待ってください!」
私の言葉など無視し、白濱副社長はさっそくどこかへ……たぶん本社へと電話をかけ始めた。
なんとか彼の腕を掴んで阻止しようとするけれど、ことごとくかわされてしまう。
「白濱副社長!」
たまらず声を上げると、彼は私を見おろして、ニヤリと笑った。
「そう。俺って、こう見えても副社長なんだよねぇ……だから、俺の言うこと聞いてくれるよね?」
「……えっ」
そう言われてしまえば、逆らうことなどできるはずがない。
「白濱副社長、ずるいです」
膨れっ面で文句を言うと、彼がふふっと笑う。そして私の頭を少し乱暴な手つきで撫でてきた。
ムキになって彼の手を払い除けると、彼がほほ笑みながら電話の相手に向かって「総務課に繋いで」と要求した。
程なくして、電話の相手が課長に代わったことを、彼の口振りから判断する。
白濱副社長から電話が来て、私が総務課に戻らないとなれば、またしばらく、課長からの追求が止むことはないだろう。
憂鬱で項垂れていると、白濱副社長が「これでよし」と呟いた。そしてちょうど近くを通りかかった秘書を、呼び止めた。