溺甘副社長にひとり占めされてます。
藤田さんに促された瞬間、突然、少し後ろを歩いていた三宅さんが、白濱副社長に向かって走り出した。
「白濱副社長! 今日は本当に、すみませんでした!」
彼の目の前で、深く頭を下げた。必死な様子に、思わず足が止まってしまう。
「会議中に慌てて来るかと思ってたけど……今頃? ちょっとさぁ、来るの遅すぎだよね?」
口元に冷徹な笑みを湛えて、白濱副社長が三宅さんに詰め寄っていく。
営業部の三宅が来たら会議が終わるころ出直すよう伝えてと、会議が始まる前に白濱副社長が言っていたことを思い出す。
廊下の空気が、白濱副社長の冷やかさと共に、一気に張りつめていく。
「データが上がってくるのが遅かっただけならまだしも、商品名や金額が間違ってるなんて、話にならないよ? 何考えて仕事してるのかな?」
「すみません!」
「気付いて速やかに直したから、なんの問題もなく会議は終わったけど……もしかして君は、ロイヤルムーンホテルに……それとも俺の顔に、泥を塗ろうとでも思ったのかな?」
「滅相もございません!」
怒り心頭な白濱副社長に向かって、再び三宅部長が頭をさげた。
「もう、次はないからね」
冷たくそう言い放ってから、白濱副社長は天井を仰ぎ見る。