溺甘副社長にひとり占めされてます。
ビルの地下は駐車場になっていて、エレベーターホールからほど近い場所に、以前も乗せてもらった彼の車が停まっていた。
「どうぞ」
白濱副社長が助手席を開けてくれた。恐縮しつつも、私は車に乗り込んだ。
二回目だけれど、やっぱり落ち着かない。
そわそわと車内を見回していると、彼も運転席へと乗りこんできた。
バタリとドアが閉まれば、急に静けさが迫って来たような気がして、余計に落ち着かなくなっていく。
僅かにシートが軋む音が響いた。
この空間には、私と白濱副社長しかいない。
ふたりっきりだということに緊張を募らせていると、彼がシートへと身体を沈め、ふうっと大きく息を吐き出した。
その横顔には疲れが滲んでいて、私は白濱副社長の顔を覗き込みながら、小さく声をかけた。
「白濱副社長、お疲れ様です」
途端、彼はいつもの自分を取り戻すように、にこりと笑ってみせた。
「ありがとう……それにしても、本当に今日はどうなるかと思った」
「……それって、さっきの三宅部長のことですよね?」
「そうそう。彼のことをそこまで信用してないから、すぐに確認してさ……結果、良かったけど、気付くのが遅かったらと思うと」