溺甘副社長にひとり占めされてます。

画面の中にいる女性同様、私も彼の発言に唖然としてしまう。


「片想い。それはつまり、君のことを言っているのか?」


突然の割りこんできた声に、私と同僚はそろって悲鳴を上げる。

振り返ればいつの間にか、課長も後ろから白濱副社長インタビューを覗き見ていた。


「館下君! そうなんだろ?」


強い口調で問い詰められ、私は何と返すべきか考える。

白濱副社長から俺の秘書に、そして恋人になってほしいと言われてから、四日が経った。

そして私は、それの返事をいまだできずにいる。

彼はちょっと強引で、一筋縄ではいかないタイプだ。

付き合ったら、間違いなく振り回されてしまうと思う。けれど……彼に振り回されるなら、楽しそうだなと思ってしまっている自分がいる。

仕事に対する真摯な姿勢に好感を持っている。

秘書として彼のもとで働けたら、いつか私も遥子さんたちのように輝く存在になれるかもなんていう思いを抱いてしまっているのも事実だ。

白濱副社長は素敵な人だと思う。それは間違いない。

私自身、彼に対する苦手意識はもうない。むしろ嫌いではない。

けど、何の輝きも持っていない私が、簡単に付き合っちゃいけない人だとも思うのだ。

彼の気持ちを受け入れたら、私はきっと、彼に見合った人になるために必死になると思う。

相手が相手だからこそ、大きな覚悟が必要になってくる。


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