溺甘副社長にひとり占めされてます。
「館下君、聞いてるのか!?」
あまりの迫力に気圧されてしまう。
おまけに、さっきまでいなかった宍戸さんがデスクに戻って来ているのを知ってしまえば、彼と自分の現状を話す気になどとてもなれなかった。
「……あの……私にはなんのことやら」
適当に話を流してしまうつもりだったけれど、できなかった。あろうことか彼が私の邪魔をした。
『白濱さんを夢中にさせている女性は、いったいどんな方なんですか?』
『とっても美しくて、麗しい女性です』
スマホを握りしめる手が小刻みに震えてしまう。小さく呻き声もあげてしまった。
『白濱さんにそこまで言わせるなんて、いったいどんな女性なのか、ますます気になってしまいますね!』
『これ以上は教えませんよ。秘密ですから』
手の中で白濱副社長が楽しそうに笑っている。
美して麗しい……“美麗”。
ハッとし顔をあげる。課長は納得したような顔を、宍戸さんは怒りに満ちた目を、同僚たちはにやにやと冷やかすような眼差しを、私に向けてくる。
まったく秘密になどなってない。
みんな彼の言葉が誰を指しているのか、しっかり分かっている。
スマホを同僚に返し、気まずさで身を小さくさせていると、唯一興味なさそうにメイク直しをしていた村野さんが、鏡から視線を上げ「あっ」と声を発した。