溺甘副社長にひとり占めされてます。
話を終えれば、遥子さんはまた私に背を向け歩き出す。
その背中が見えなくなってやっと、私は大きく息を吐き出し、緊張を解いた。
ここ三日間、仕事が終わったら副社長室に来るようにと、白濱副社長から呼び出されているのだ。
有名店のケーキだったりシュークリームを出されるので、それを白濱副社長と一緒に食べて、そのあと彼の仕事が一段落するまで、私は室内待機を命じられる。
仕事が終わったらそのまま彼と一緒に高級店でディナー。
食べ終わったら、彼に家まで送ってもらう。
そんな生活が三日も続いているのだ。
彼はもっと自分のことを知ってもらいたいと、私と一緒にいたいと言ってくれている。
けれど、多忙な彼に自宅まで送ってもらったり、そのあとまた彼が仕事をしていることも察してしまえば、自分自身が彼の負担になっているようで、申し訳ない気持ちになってくる。
とにかく、断ったのだから今日はもう何も思い悩むことはない。これで良かったんだ。
ホッとしたのも束の間、廊下にいる女性社員たちが自分のことを見ていることに気付いて、私はそそくさと自分のデスクへと戻ったのだった。
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「館下君。残業なんてしなくていいからな」