溺甘副社長にひとり占めされてます。
「しかもさ。聞いた話によると、白濱副社長の秘書の人、妊娠してるらしいよ」
「あー、そう言えば、この前具合悪そうにしてたけど……もしかしてつわりってやつ?」
女性たちはまだ私の後ろにいるらしい。
ふたりから離れたくて歩く速度をあげようとしたけれど、出来なかった。気になる言葉が聞こえてきたからだ。
「でもあの人、まだ独身じゃなかった?」
「もしかして、白濱副社長との子供だったりして」
「白濱副社長に捨てられちゃっただけじゃなく、仕事まで辞めさせられちゃったとか?」
「それあるかも。白濱副社長っていろいろチャラいし、裏では平気でそういうことしてそうな感じもするし」
私は立ち止まった。
そのまま後ろを振り返り、さっきから変な噂話をし続けている二人と向かい合う。
突然の私の行動に、ふたりも驚いたように目と口を開け、その場で足を止めた。
けれど、面食らった顔をしていたのはほんの数秒だけ、すぐに攻撃的な表情へと変化していく。
「なに?」
彼女たちから睨みつけられたけれど、怖いとは思わなかった。逆に、怒りが倍増していく。
「勝手なこと言わないでください。白濱副社長はそういうことを平気でできる人じゃないですから」