溺甘副社長にひとり占めされてます。

遥子さんは既婚者だ。

このことはあまり公にしていないらしく、私も白濱副社長から先日聞いたばかりである。

彼女は結婚後も旧姓のまま仕事を続けているし、彼女たちが知らなかったとしても無理はないけれど……面白おかしく騒ぎ立てているその声と、白濱副社長の品位を下げる発言に、頭にきてしまった。

仮に彼女たちが言うように、遥子さんが独身で、白濱副社長がお腹の子供の父親だったとしても、その言葉通りには絶対にならない。


「彼はそんな無責任な人じゃない」


彼は遥子さんを邪険に扱ったりなどしない。彼なら大切にする。


「あなたたちが思ってるよりずっと、真っ直ぐな人です」


私はそう思う。

強く言い切ると、なにか言い返したそうに私を睨みつけていたふたりが、突然、表情をなくした。

彼女たちの目線は私を通りすぎ、どこか後方へと向けられていることに気が付いた。

振り返ろうとした瞬間、後ろから伸びてきた手に肩を掴まれた。そのまま軽く引き寄せられ、私は誰かに後ろから抱き締められる格好となる。

誰か。そんなの一人しかいない。


「よく聞こえなかったなぁ。誰のこと話してたの?」


耳元で囁きかけられ、私は思わず笑みを浮かべた。


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