溺甘副社長にひとり占めされてます。
「白濱副社長には秘密です」
目と目をあわせてそう返事をすると、彼は「残念」と楽しそうに呟いた。
そして、私たちの目の前に立っているふたりに目を向け、にっこりと、怖いくらい完璧な微笑みを浮かべる。
「君たちは俺のこと話してたよね。困ったな。俺いったい、どんな無責任なことしちゃったのかな? 心当たりがないから、教えて欲しいなぁ」
白濱副社長の明るくも冷たく聞こえてしまう言い方に、ふたりの表情は一気に青ざめていく。
怯えているのは明白なのに、彼は追求の手を緩めようとしなかった。
「どうしたのかな? 俺の聞き違いだったのかな。それとも、言えないようなことを喋っていたのかな? 確か君たち、うちの社員だよね。どこ所属だったっけ?」
白濱副社長のことを悪く言っていたこと。私はまだ腹の虫がおさまっていない。
彼の問いかけに、なかなか口を開けないでいるふたりに代わって、私が答えた。
「営業部です」
すぐさま、ふたり同時に睨みつけられたけど、そこも気にしない。私は知らんぷりを決め込んだ。
「営業か。うんうん。分かった。よーく、覚えておくね」