嘘をつく唇に優しいキスを
会議室にいるのは、今泉部長に水内さんと町田さん。
今泉部長は四十代後半の既婚者。
確か、奥さんは十歳年下で二人の子供のお父さん。
水内さんは五歳上で寡黙な人、必要最低限のことしか話したことがない。
町田さんは三歳上、明るくてムードメーカー的な存在で、年上だけどすごくフレンドリーな人。
ちなみに二人は独身だ。
「イベントの時、来場者に花の種以外のプレゼントはどうするかな……」
「そうですねぇ、今回も無難に子供には風船とかですかね」
部長たちは三ヶ月後に控えているイベントの打ち合わせをしていた。
イベントではエクステリアの無料相談を行ったり、園芸用品の販売をする予定だ。
イベントは毎年同じような内容だからプレゼントだけは変化をつけたいみたい。
一年に一度イベントがあるけど、去年私は参加していない。
土日を利用して開催されていたんだけど、事務の私は事前の準備まで手伝い、特に用事がなければ当日は休みと言われていた。
あとから考えたら、少しでもイベントの様子を見に行けばよかったなと。
「風船なぁ。子供が手を離して風船が空に飛んでいって泣く子が続出するんだよな」
「そういえばそうでしたね」
「麻里奈ちゃんはどう思う?」
「え、私ですか?」
いきなり今泉部長に意見を求められて声が裏返った。
みんなの視線が私に集中し、焦ってしまう。