嘘をつく唇に優しいキスを

家族連れも多く、子供たちのお目当ては風船で私のブースには行列が出来るほど。
際限なく配るのは難しいと判断し、今回バルーンアートは数量限定にしていた。

数量を間違えないように所定の数の風船、割れた場合の予備の風船を違うケースに入れて分かりやすくした。

子供がいる家庭は、まずその風船をゲットしてから他のブースへという流れになっていて、私は嬉しい悲鳴を上げていた。

「わたし犬がいい」

「オッケー、すぐ作るからね」

私の手元を興味津々で見ている女の子。

町田さんは自分のブースが忙しく、バルーンアートまで手が回らないといった状況だ。
そんなこんなで今は私一人で対応している。

前もって作っていた分はすべて配ってしまったので、今は出来たらそのまま子供に渡す感じだ。
行列を見るとあと十人ぐらいの子が待っている。
早く作らなきゃと焦れば焦るほど力加減を間違えてしまい、パンという音と共に風船が割れた。
ヤバイ、子供たちの前なのに……。
割れた音に驚く子供たちに慌てて謝罪する。

「ごめんね。ビックリしたよね」

「マジでビビった。おねえちゃんヘタクソ~」

「ちゃんとつくれるの?」

「今度は割るなよ~」

「ダッセェな」

子供たちの容赦ない言葉に心が折れそうになり、北見さんのアドバイスを思い出す。
なにを言われても気にしない、と心の中で唱えて気持ちを落ち着けようとした。
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