嘘をつく唇に優しいキスを
自分の仕事もあるのに私のことをフォローしに来てくれるなんて、まるで恋愛マンガのイケメンヒーローみたいだ。
でも、私はその物語のヒロインにはなれない。
ヒーローのただの同期でしかない……って、自分で考えていて虚しくなる。
あー、大声を出してスッキリしたい気分だわ。
せっかく髪の毛を切って心機一転したはずなのに!
困っている時に助けてくれるのはすごくありがたかった。
でも、その優しさを勘違いするほどバカじゃない。
私にも学習能力はあるんだ。
はぁ、いつになったらこの状況から抜け出せるんだろう……。
ため息をついていると、小さな女の子の声がした。
「おねえちゃん、あのわんちゃんつくって」
犬の写真を指差している可愛い女の子。
「あ、ごめんね。今すぐ作るから」
感傷に浸っている暇はない。
気合を入れ直し、風船を膨らませ始めた。