嘘をつく唇に優しいキスを
***

十一時半になり、私は一足先に休憩に入らせてもらった。

昼休憩は交代制になっていて、私は前半組なので早目に休憩室に来ていた。
今日は会社でお弁当を注文していたので、各自それを持って休憩室で食べるようになっている。

弁当の蓋を開けると、美味しそうな幕の内弁当。
しかも、私の大好きな栗おこわ。
割り箸を割って一番に栗を掴んで食べた。

うちの会社には社員食堂というものがない。
まぁ、大手企業とは違い小さい会社だから仕方ないけど。

通常、営業の人は昼は外に食べに行ったり、休憩室でお弁当を買ってきて食べたりする。

私は内勤だから基本、外に出ることはない。
自分で作ったお弁当だったり、会社の近くのコンビニで買って休憩室で昼ご飯は食べている。

お弁当を食べ終わり、片付けようとしたところで町田さんが休憩室に入ってきた。

「麻里奈ちゃん、バルーンアート任せっきりで少ししか手伝えなくてごめんな。忙しかっただろ」

「お疲れさまです。まぁ、忙しかったですけど新庄くんがヘルプに来てくれたのでなんとかなりました。町田さんも掛け持ちで大変だったんだから仕方ないですよ」

「ホントごめんな、マジで助かったよ。あっ、そういえば花田社長に会ったんだ」

「来られていたんですね。気がつきませんでした」

必死に風船と格闘していたので、周りが見えてなかった。
失礼がなかったかな、と不安になる。
< 52 / 74 >

この作品をシェア

pagetop