嘘をつく唇に優しいキスを
「痛っ」
「悪い。痛かったか?これ、傷口に砂とか入っているから洗い流して消毒した方がいい。俺んち、ここから近いから行こう」
は?
一瞬、聞き間違いじゃないかと思った。
ホント、新庄くんはバカじゃないの?
人も気持ちも知らないで……。
彼女がいるくせにそんなことを言わないで欲しい。
「いやいやいや、行こうじゃないよ。なに言ってんの?自分の家に帰って消毒するから」
必死に抵抗していると、チッという舌打ちが聞こえた。
「おい、あの時の賭けを覚えてるか?」
「賭けって……」
「バルーンアート、俺の方が先に出来たらなんでも言うことを聞くって言ってただろ」
「あっ、」
そういえば、そんなことを言った気がする。
でも、あれは売り言葉に買い言葉で言っただけじゃないの?
あれからなにも言ってこなかったし、私はすっかり忘れていた。
「今、それを使うから言うことを聞け」
「そんな……」
言うことを聞けだなんて偉そうにとは思ったけど、今日の新庄くんからは有無を言わせない圧を感じた。
私はため息をつき、おとなしく従うことにした。
「じゃ、行くぞ。立てれるか?」
そう言って私のバッグを肩にかけると、手を差し出してくる。
渋々、その手を掴み立ち上がると私の身体はなぜか後ろへ傾いた。
あっと思った時には、私は新庄くんに抱きかかえられていた。