笑顔をくれた駅員さん



「駅員さんは、名前なんて言うの?」



「俺は、富永 悠介!(とみながゆうすけ)」





名前を聞いた瞬間頭が真っ白になって心臓が嫌な音をたてた。






悠介…?




悠介って…あのお兄さんと同じ名前だ…





でも名字は”岡本”だったはず…





名字が違うからあのお兄さんじゃないよね…?






一瞬ドキってした私はまだ、初恋を忘れることが出来ていないのかもしれない。






初恋は叶わない恋だってよく耳にするけど、私はその通りだと思う。





実際に叶わなかったのだから。





でも、何をしてても思い出すのは甘くて苦すぎる恋の思い出だった。






苦かったけど、今思えばあの頃が1番楽しかったな。




でも、後悔していることがひとつだけある。






私の気持ちを伝えないまま、お兄さんの前から姿を消してしまったこと。





どうして伝えなかったんだろう。






たぶん、あの時は彼女がいることを分かっていたから怖かったのだ。





幼い小学生だったから。



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