好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
帰った庵に灯りはなかった。
「……ママたち、まだ帰ってないね。あがってく時間、ある?」
「そりゃ、真紅を一人になんかしたら紅緒様に呪われる」
黎が茶化すので、真紅はそっと睨み上げた。
すると、「ごめんごめん」と黎が真紅の頭に手を置いた。
「お二人が帰ってくるまで、いてもいいか?」
「うん。……そういえば、ちゃんと中に入ってもらったことなかったよね」
いつも紅緒が玄関先で塩をまくので、黎が敷居をまたいだこともないかもしれない。
「お茶淹れるね。あがって」