好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
前例から逸れる者は忌まれる。
だが、正直まだ自分の位置は黒藤よりマシだと思う。
真紅に言ったように、黎には架(弟)がいる。
家のことは任せられるし――周囲の大方も架の方が相応しいと判断する――、危険視されるような力もない。
その上今や、鬼性も失くした身だ。
(………)
問題は、真紅の方だ。
小路一派は、まだ真紅が黎と恋仲とは知らない。
知っているのは、紅緒と小埜の人間の数人のみ。
真紅が本当に次代と望まれるほどの力を持てば――それでなくても始祖の転生として特別視されているくらいだから、それ相応の相手との縁談を望まれるだろう。
――元・鬼人で現・徒人(ただびと)の自分は、明らかにその位置には及ばない。