好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
目立つ紅髪は黒く変えているが、黒藤とそっくりの容姿まではどうしようもない。
無炎も月御門の苗字を名乗っているが、周囲には黒藤とは親戚だと話してあるようだ。
「それで、真紅。どうだ?」
料紙に目を落としていた真紅に、白桜が再び呼びかける。
「うん――。やっぱりおかしい、と思う……」
真紅が不審に思ったのは、このだだっ広い斎陵学園の、風の流れだった。
「風? 白桜は気づかなかったの?」
百合緋が白桜を見上げる。白桜は肩を竦めてみせた。
「俺の本質は『焔(ほのお)』だからな。本質が『風』である真紅には、一歩及ばないところがある」
陰陽師――そもそも人間には、本質あるいは性(さが)というものがあると、真紅は最初に紅緒から聞いた。