好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】


百合緋に礼を言われて、架は虚を衝(つ)かれたような顔をした。
 

百合緋は泣きそうな顔で、小首を傾げた。


「桜城のおうちは兄弟そろって優しいんだね」


「―――」
 

今度は、少しだけ架の瞳が潤んだように見えた。


出自を知った架に、それを知らない百合緋の言葉はどれほど響いただろうか。
 

御門、小路、双方の家には明かされていないが、百合緋は勿論、真紅の恋人が桜城――小埜黎であると知っている。


真紅にだけダダ優しい人だ、と。


《……レ》
 

糸が張るように空気が張りつめた。


真紅と百合緋が、同時に振り向く。


その先にあるのは百葉箱の社だ。

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