好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
「……わかりました。真紅の直感を信じましょう。でも、騒いでは駄目ですよ?」
肯く真紅を見てから、紅緒は姉に目を向けた。
「姉様、ここは真紅に任せましょう」
「え、ええ……」
若干肯き切れないのか、歯切れの悪い紅亜の背中を押して、紅緒は茶室を離れた。
「紅緒……」
咎(とが)めるような響きの姉の声に、紅緒は首を一度だけ横に振った。
「わたくし達の系統には、妖異ではない、動植物と会話する力を持つ者もあります。
真紅は会話まではいってないようですが、まことあの三毛猫の声が聞こえているのかもしれません。
『傍にいてほしい』は、簡単な言葉ですが、この上ない望みの言葉でもあります。
本当に叶えてくれる人にしか、叶えてほしいと願う人にしか、言えない言葉だからです」