好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
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茶道具を仕舞うための、心ばかりの戸棚の下の段に段ボールで即席の小屋を作って、タオルを何枚も重ねた上で三毛猫が喘鳴(ぜいめい)している。
「………」
真紅はその前に膝をついて、じっと三毛猫を見つめていた。
黙って、ただ見守っていた。
いつの間にか、涙が頬を伝っていた。
大変だよね。苦しいよね。辛いよね。
……生命(いのち)が生まれるって、こんなに命がけなんだ。
「……大丈夫だよ。ひとりにしないから」
小さくささやいてそっと手を伸ばすと、三毛猫は重たそうな動作で頭をもたげて、真紅の指先に鼻で触れた。
「………?」
どうしてか、三毛猫が微笑(わら)ったように見えた。