好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
最初こそ別邸の月御門の家人に疎まれていた黒藤だったが、いつもの調子で気楽に話しているうちにその壁は崩れてきたように見える。
だが、一番肝心というか……白桜の幼馴染で親友の水旧百合緋(みなもと ゆりひ)には相変わらず嫌われまくっている。
京都の本邸にいる近い親族以外では、月御門家に白桜がまことは女性(にょしょう)であると知るものは、百合緋しかいない。
最近、黒藤の従妹の真紅には知られたが、それ以上には知られる気もない。
「……過去を憶えているとは、それほど辛いものなのか……」
「ちげーよ、白。憶えて、じゃない。『覚えて』いるんだ」
黒藤は白桜を『白(はく)』と呼ぶ。
同じように、白桜も『黒(くろ)』と呼んでいる。
思えば、お互いしかそう呼ばない。