好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
「……過去世(かこせい)を憶えているとはたまに聞く話だが……」
「まあな。前世の記憶があるとか、研究者の論文だって出回ってる。
真紅はそれを、何人分も持っちまってる。
それも生まれつき覚えていた――当たり前に頭の中にあったもんじゃなくて、一瞬の間に頭の中に甦ってきたもの。
……戻ったときのショックがあっておかしいもんじゃない。が、あんときはあんときだったしなあー」
今度は抱えていた足を投げ出してぼやく黒藤。
あんとき、とは、真紅の退鬼師としての血が一気に目覚めた瞬間、桜城黎――今は小埜黎が、吐血して意識を失っていたと知らされたときだ。
その存在のために、総て――陰陽師にとっては総てと言っていいもの――を手放そうとした真紅だ。
自分よりも黎が心配だったのだろう。
「……影小路(そっち)の反応はどうだ? 中枢とは顔合わせたんだろう?」